きみと秘密を作る夜


学校では、文化祭の準備が始まった。

私たちのクラスはたこ焼き屋をやることに決まり、みんなで放課後に看板やなんかを作る作業で忙しくなった。


遼ともなかなか会えないが、前より連絡の頻度は増えたと思う。



「あー、リナまたスマホ触ってるぅ。暇ならこっち手伝ってよぉ」


ペンキ片手のあさひに、「ごめん、ごめん」と私は慌てて謝った。

が、あさひはにやにやしながら私の手の中を覗き込んでくる。



「また遼? ラッブラブぅ」

「ちょっと、見ないでよ」


恥ずかしくなり、私はスマホを隠そうとしたのだけれど。



「って、何これ。『まだ学校終わらないの?』、『ほんとに居残りしてるだけ?』、『連絡ちょうだい』って」

「………」

「遼って普段こんなに束縛激しいの?」

「うーん」


今までは、そんなことはなかったが、しかしあのバーでの一件以来、遼は心配性かと思うほど、私の行動を知りたがるようになった。

確かに、束縛と言われれば束縛なのかもしれないけれど。



「私のことが心配なんだって。でもそれで遼が安心するならいいかなって」

「ノロケじゃん」


別にノロケているつもりはないのだけれど。

何だかなぁ、と思いながら、私は遼に『まだ学校だよ』とだけ返信して、ペンキ塗りの続きを再開した。

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