きみと秘密を作る夜
急落
10月中旬。
あれほど毎日準備を頑張っていた文化祭が終わってしまうと、何だか気が抜けたような状態だった。
日曜日なのに、することもなく家でぼうっとテレビを観ていた私に、祖母が声を掛けてきた。
「リナちゃん。ドーナツ作ったんだけど、一緒に食べないかい?」
顔を向けると、祖母の手にある大皿には、山盛りのドーナツが。
「すっご。それ全部おばあちゃんが作ったの?」
「そうだよ。次から次に作ってたら、こんな量になってしまったんだ」
老人会の旅行に行ってからというもの、祖母は嘘みたいに元気になっていた。
私は思わず笑ってしまう。
「そうだね。そろそろお昼だし、一緒に食べよっか」
その時、私のスマホが着信音を鳴らした。
遼からだ。
私は祖母に「ちょっと待ってて」と言い、別の部屋に移動した。
「もしもし。どうしたの?」
「いや、何してるかなぁ、と思ってさ。俺、バイト終わったから、暇なら会えないかなって」
「今から?」
「うん。今、うち、誰もいないから、よければきてほしいんだけど」
遼が言いたいことはわかる。
私がずっと、はぐらかして逃げてきたこと。