きみと秘密を作る夜


翌週からはテスト期間だ。

テスト勉強は嫌だったが、しかしそれが遼と会わなくてもいい口実になることは幸いだった。



「ねぇ、リナ。最近、遼とうまくいってる?」


あさひに聞かれてどきりとした。



「昨日、偶然、地元で遼に会った時に、ぼやかれたの。『リナが冷たくなった気がする』って。言われてみれば、最近、リナの口から遼の名前、聞かないなって。どうなの?」


ずいと顔を近付けられたが、曖昧にしか笑えない。


私自身が、自分の心の内に潜むもやもやしたものに戸惑っているのに、なのにどうなのかなんて答えられるわけもない。

何よりあさひは、昔からの遼の友達だ。



「別に普通だよ。付き合って2ヵ月過ぎてるんだから、こんなもんでしょ」

「ふうん。リナは相変わらずだねぇ」


あさひは肩をすくめ、勉強するでもなくノートにぐるぐると落書きを始めた。



「まぁ、ふたりの問題に口出すつもりはないけど、なるべく喧嘩だけはしないでね? 私、板挟みで、どっちの味方もできないでしょ」

「そうだね。気を付けるよ」


本当は、喧嘩する気にもなれないけれど。

とは、言えないまま、私はやっぱり曖昧に笑っておく。


多分もう、私と遼の歯車は、目に見えて噛み合わなくなっているのだろうが、それでも私はその事実を無視することで、問題を先送りにしていたかった。

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