きみと秘密を作る夜
やっと長かったテスト期間が終わった。
私に会いたがっていた遼は、しかしバイトのシフトを変更できず、泣く泣く諦めたようだった。
疲弊した体を押して、家に帰る。
祖母は今日、老人会の集まりだったが、そろそろ帰っている時間だ。
私も早く帰れば、今日こそゆっくり、一緒にドーナツを食べることができる。
玄関のドアに手を掛けたが、でも鍵が閉まっていて驚いた。
「あれ? おばあちゃん、まだ帰ってないのかな?」
首をかしげながらも、鍵を開け、室内に入る。
玄関のたたきにも祖母の靴はなく、私は改めてスマホで時間を確認した。
予定では、30分前にはすでに近所の人に車で送ってもらって帰ってきているはずなのに、もしかしたら何かトラブルでもあったのだろうか。
急に不安になり、どうしたものかと思っていた時、手の中のスマホが震えた。
着信画面には、母の名前が表示されている。
それを見た瞬間、とてつもなく嫌な予感に支配され、私は恐る恐る通話ボタンをタップした。
「リナ。あなた今、どこにいるの?」
「……家、だけど」
どくん、どくん、と、すごい大きさで鼓動が脈打つ。
少しの間を置き、母は息を吐いた。
「あのね、おばあちゃん、老人会が終わって帰ろうとしてた時に急に倒れて、救急車でうちの病院に運ばれてきたの。今は意識がないわ」
「………」
「それでね、もしかしたら最悪のことを覚悟しなくちゃいけないかもしれないから、とにかくリナも急いでこっちにきてほしいの」