きみと秘密を作る夜



祖母が亡くなって2日後に、通夜が行われた。


母はずっと葬儀の準備でばたばたと走りまわっているが、時々、物陰でそっと涙を拭っていた。

その姿を見ているからこそ、私が泣くわけにはいかないと思った。



今朝からは、父も駆けつけてくれていた。



「他に手伝えることがあったら言ってくれ」


父と会ったのは、離婚して以来、2年ぶりだった。

それがこんな形でだなんて、皮肉な話だけれど。



「お父さん、休憩してよ。ずっと動きまわってたでしょ?」

「そうだな。じゃあ、リナも一緒に休憩しよう? な?」


言われて、私たちは自動販売機の横のベンチに腰掛けることにした。

父が飲み物を買って私に手渡してくれる。


父は缶コーヒーを飲みながら、しみじみと言った。



「リナはちょっと会わないうちに、背が伸びたな。それに、大人っぽくなった」

「私もう高校生だよ? 成長してて当たり前だよ」

「そうだよなぁ。お父さんにとっての2年と、リナにとっての2年は、濃さもスピードも、全然違うよな」

「うん。色んなことがあったよ。悲しい経験も、いっぱいした」


懐かしくて、でももう遠い昔のことのようにも感じる。



「お父さんな、何度もリナに電話しようと思ったんだ。でも、それがいいことなのか悪いことなのかわからなかった。いつも勇気が出なかった」

「私のことなんかもう忘れてると思ってた」

「そんなわけないだろう。大事なリナのこと、忘れたことなんてないよ」
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