きみと秘密を作る夜


さんざん泣いて、泣き疲れて、少しだけ冷静さを取り戻した私は、晴人と一緒に近くの植え込みに腰を下ろすことにした。

風が涙の痕を乾かしてくれる。



「ねぇ」

「んー?」

「何か悔しいんだけど」

「何が」

「晴人の方が、うちのおばあちゃんのことよくわかってる」

「そりゃあ、お前、どんだけの付き合いだと思ってんだよ。俺は3歳の頃からばあちゃんちの隣に住んでんだぞ」


なぜか晴人は偉そうだった。



「あのへん、同世代のやついねぇじゃん? だから俺は、ガキの頃はずっとひとりで、道路に落書きして遊んだりとかしてて」

「うん」

「したら、たまに、ばあちゃんがお菓子くれんだよ」

「嘘じゃん」

「ほんと。ドーナツとか砂糖まみれで激甘なんだけど、近所で構ってくれるのなんてばあちゃんだけだったから、俺はそれがすげぇ嬉しくてさ」

「そんな話、初めて聞いた」

「ドーナツ食ってる俺見て、ばあちゃんはいつも言うんだ。『うちの孫は、リナちゃんっていうんだよ』、『ハルくんと同い年なんだ』、『天使みたいに可愛い子なんだよ』、『いつかハルくんにも会わせてあげたい』、『きっと仲よくなれるはずだ』って」

「何それ……」

「俺がどんだけばあちゃんから孫自慢を聞かされまくったと思ってんの。お前よりも詳しくて当然だっつーの」


祖母は晴人に、一体どんなことを吹き込んでいたのだろう。

私は急に恥ずかしくなった。
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