きみと秘密を作る夜
「まぁ、確かに、初めてお前を見た時には、こんなド田舎に似つかわしくないやつがいるなと思ったよ。それが、ばあちゃんが言ってた孫だって知った時には、すっげぇびっくりした」

「なっ」

「顔は可愛いよ。天使な。それは認める。でもお前、性格がなぁ。ひねくれまくりだよ。逆にびっくりしたっつーか」

「って、ちょっと! 途中から悪口じゃん!」


思わず声を上げてしまうと、私の反応を見た晴人は、ぶはっと吹き出したように笑った。

何だかバカらしくなって、私も力が抜けたように笑ってしまう。



「ありがとね、晴人」


私の言葉に、晴人はうなづいて、立ち上がった。



「帰るの?」

「おー」

「ほんとにおばあちゃんに会っていかなくていいの?」

「いいんだよ」


風が吹く。

私と晴人の間を冷やす、風が。



「俺の分まで、ばあちゃんによろしく」

「うん」

「じゃあな、里菜子」


去って行く晴人の背中を見るのは、もう何度目か。



私じゃない人を選んだ人。

もう二度と関わらないと、事あるごとに誓ったはずだったのに。


なのに、どうして晴人はいつも私に、中途半端な優しさばかりかけるのか。

< 199 / 272 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop