きみと秘密を作る夜
葬儀は終わった。
出棺の時、涙をこぼす母を支えたのは、父だった。
しかしふたりはもう夫婦じゃないし、元のさやに戻るわけもなく、その日の夜に、父はひとり向こうへと帰っていった。
別れても、ずっと連れ添ってきた絆はある。
よくわからないけれど、今の私と晴人の関係も、そういうものに近いということなのか。
土日を挟んで、明日は月曜日だ。
「ねぇ、リナ。明日はちゃんと学校に行くわよね?」
「行くよ。そう休んでらんないし」
「そうよね。お母さんも明日からまた仕事だから」
母と向かい合わせに座ってゆっくり話すなんて、いつ以来か。
母はこんなに疲れた顔をしている人だったっけ。
「お母さん、何か老けたね」
「そりゃあ、そうよ。あなたが大きくなった分だけ、お母さんも年を取るわよ」
「もうあんま夜勤とかしない方がいいんじゃない?」
「そうね。おばあちゃんも亡くなったしね。リナとふたりなら、もうそこまで無理しなくてもいいかもしれないわね」
母とふたり。
何だかまだ全然実感はないけれど、でも確かにもう、祖母はどこにもいない。
少しの沈黙の後、母は問うてきた。
「ねぇ、リナ」
「何?」
「ごめんね。お父さんとの話、立ち聞きしてしまったんだけど」