きみと秘密を作る夜
父との話。

向こうに戻って一緒に暮らそうとか言われたやつだ。



「どうしたいかは、あなたが決めるとはいいわ」

「え?」

「お母さんのワガママで離婚して、あなたの意見も聞かずにこっちに連れてきたんだものね。おまけに家事やおばあちゃんのことまで任せて、恨まれて当然よね。こっちにきてからだって色々あったし、リナはお母さんのことが嫌いでしょう?」

「………」

「でももう、今度はあなたが決めたことに従うわ。お父さんと一緒に暮らしたいなら、お母さんは止めないからね」


あぁ、母は母なりに、私との関係に悩んでいたのか。

もしかしたら、ずっと私に対して罪悪感だって抱えていたのかもしれない。


もっと早く、私は母と話し合うべきだった。



「私はここで、お母さんと暮らすよ」


私の言葉に、母はひどく驚いた顔をした。



「先のことはわかんないけど、とりあえず今は、ここにいる。頑張って受かった高校だし。友達もいるしさ。あともう転校生は嫌だし」

「………」

「あ、でも、夏休みとか冬休みとかには、お父さんに会いに行ってもいい?」


涙ぐんだ母は、顔を覆う。

そして何度もうなづきながら、「もちろんよ」と言った。

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