きみと秘密を作る夜
少しの間を置き、冷静さを取り戻した母は、「今夜は簡単にラーメンにでもしましょうか」と言った。
今までは祖母の健康面を気にして、油っこいものは避けていたのに。
「ねぇ、リナ」
母は湯を沸かしながら聞いてきた。
「ずっと気になっていたんだけど、あなたまたハルくんと会ってるの?」
祖母が倒れたと聞いて、病院に向かった時のことか。
あの時、手を繋いでいた私たちを見た母が、それを気にするのもわかるけれど。
「たまたまだよ。病院に向かおうとして外に出たら晴人に会って、バイクで送ってもらっただけ。電話番号すら知らないのに」
「本当にそれだけ?」
当然だ。
私と晴人は、今も昔も、何でもない関係のままでしかない。
「お母さんは、未だに晴人のことが嫌いなんだね」
「そうね。お母さんは、正直、あなたの体に傷を残したハルくんのこと、きっと一生許せないと思うの」
「大袈裟だよ」
「大袈裟じゃないわよ。親だもの」
私に向き直った母は、毅然と言った。
しかし私はやっぱり納得できない。
「あれは晴人が悪いわけじゃないって、何度も言ったよね?」
母を、真っ直ぐに見た。