きみと秘密を作る夜
遼は否定した。

でもやっぱり私のやってきたことは、間違いじゃなかったと思いたい。



「うちの孫なんて、田舎は嫌だって言って寄り付きもしないんだから、羨ましいもんだよ」


恵子さんはそう言って笑いながら、ご飯と味噌汁と鮭を、私の前に並べてくれた。

私は泣きそうになって、でも泣いたら食べられないからと、ぐっと歯を食いしばる。



「いただきます」


きっちりと手を合わせ、箸をつけた。


ご飯はほかほかしていて、味噌汁はあたたかい。

祖母が作るのと同じ、味噌汁にはなめこが入っていた。



「おいしい……」


おいしくて、また別の涙が込み上げてくる。

祖母が亡くなって以来、何を食べても味がしなかったのに。


恵子さんは、さらにサラダと煮物も出してくれた。



「しっかり食べな。あんたが元気じゃなきゃ、小泉のおばあちゃんは、安心して成仏できないからね」


そうかもしれない。

私が泣いてちゃダメだ。


顔を上げると、横で晴人も笑っていた。



「でもさ、恵子さんの飯、何でだか鮭だけ異様にしょっぱいよな」

「ちょっと、晴人」
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