きみと秘密を作る夜
晴人は、女子の部屋だからどうこうというのすらないらしい。


室内をぐるりと見渡して、机の上に置いていた宿題を見つけると、早速、ノートを広げて答えを書き写し始めた。

怒る気力も湧かない私は、もう好きにしてくれという感じだ。



「お前、意外に頭いいのな」

「こんなの簡単じゃん」

「マジか」


答えだけを写し、早々にノートを閉じた晴人。



「しっかし、お前はほんっと、人前での態度と俺の前での態度、違いすぎねぇ?」

「転校生が初日から愛想悪かったら、すぐにハブられるでしょ」


私の言葉に、晴人は心底どうでもよさそうな顔。

私は、改めてベッドに腰を落とした。



「ほんとはね、友達なんて、いてもいなくてもいいの。でも現実問題、それだと困るでしょ? 人並みの生活送れなくなるし。だから私だってこれでも頑張ってんだよ」

「ふうん。あっそ」


今度は特に何も言わず、用が済んだとばかりに、長居する気のないらしい晴人は、「じゃあな」と言葉を残しただけで、また窓を飛び移り、自分の部屋に戻って行った。



晴人は何を言っても私の気持ちを否定しない。

そういうところに安心するのかもしれない。


私は、ベッドに座ったそのままに、体を倒し、今度こそ疲れに身をゆだねて目を閉じた。

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