きみと秘密を作る夜
それから恵子さんは、デザートのアイスまで食べさせてくれ、本当に一円も払わせてくれないまま、私たちを送り出してくれた。
私は恵子さんに何度もお礼を言い、またくることを約束して、店を出た。
ふたりでバス停まで歩いたところで、晴人は足を止める。
「じゃあ、俺、こっちだし」
「え? 帰らないの?」
「本屋寄るから」
「……そっか」
それが嘘か本当かはわからない。
こんなに近くにいても、あの日から、いつもずっと、私たちの間には壁があるまま。
「ねぇ、ありがとね」
「何が」
「私さ、今日ちょっと色々あって、きっとあのままひとりで考え込んでたら辛くてたまらなかったと思うけど、恵子さん優しかったし、ご飯もおいしかったし。晴人のおかげでどうにか踏ん張れたの。だから、ありがとね」
「別に」
晴人はそうとだけ言い、「じゃあな」と私に背を向ける。
私も、ちょうど到着したバスに乗り、その場で晴人とは別れた。
祖母に恥じない自分でいるために、私がしなきゃいけないこと。