きみと秘密を作る夜
帰宅して、自室にこもり、スマホを手にする。
深呼吸してから、私は画面をタップした。
「リナ? どうしたの?」
何度目かのコール音のあと、電話に出る遼。
「話があるの」
私の言葉に、遼は沈黙する。
未だに迷いはあったが、しかし私は言葉を続けた。
「あのね、しばらく距離を置きたいの」
少しの間を置き、電話口の向こうで、遼は大きなため息を吐く。
「別れ話だと思ってた」
「別に遼のこと嫌いになったわけじゃないよ。でもこのままだと本当に嫌いになる。だから、そうなる前に、少しだけ距離を置いて、ひとりで色々と考えたいの」
「俺たちふたりのことなのに」
「うん。でも、私は遼と、別れたいわけじゃない。今までみたいに楽しくしたいからこそ、ふたり共、一度、冷静になるべきだと思うの」
遼はまた沈黙する。
しかし、どれくらいかの後、「わかったよ」と、かすれた声が返された。
「そうだよな。俺だってリナと喧嘩したいわけじゃない」
遼は、そして言った。
「何があったって、俺がリナを好きな気持ちは変わらないから」
「うん。ありがとう。じゃあ、また」
電話を切る。
晴人には感謝してる。
けれど、今、私が大切にしなきゃならないのは、遼との関係だ。
だからこそ、距離を置いて、もう一度、ふたりの関係をやり直したかったのだ。