きみと秘密を作る夜
『好き』って、何?

晴人が、私を?



「何それ。冗談でしょ? あの時、私じゃなくて矢野さんを選んだのは晴人じゃない。今更、調子のいいこと言わないでよ」

「………」

「ねぇ、カノジョいないから? 私となら、また上手いこと言ってヤレると思った? でも、わかってるよね? 私、遼と付き合ってるんだよ? 晴人は遼まで裏切るつもりなの? こんなの許されるはずないよね?」


一気に言う私。

晴人は顔を覆い、ずるずると壁を伝うように崩れる。



「わかってるよ。でももう俺は」


言い掛けた晴人の言葉を遮るように、私は床に落ちた紙袋を掴み、投げ付けた。

晴人の体に当たったそれは、ぐしゃっと中身が潰れた音がする。



「聞きたくない! 最低だよ! こんなことする晴人なんか大っ嫌い!」


叫び散らし、逃げるようにドアを出る。

そのまま走って家に戻り、一気に二階まで駆け上がって、私は自室にくずおれた。



「……何で、こんな……」


昔から、今でもずっとそう。

晴人の考えていることは、私には何ひとつわからない。


ただ、怒りと戸惑いと悲しみで、溢れた涙は止まらないまま。



「……何でよ、バカぁ……」


先に手を離したのは、晴人の方じゃない。

私なんか必要ないと言ったくせに。


なのに、どうして。

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