きみと秘密を作る夜
翌日は日曜日で、私は遅くまで寝ていたかったのだけれど、1階からの大きな物音に起こされ、眠い目をこすりながら階段を降りた。
居間には引っ越しでもするのかと思うような数の、段ボール箱が。
「ちょっと、お母さん、これ何事?」
怪訝に聞く私に、母は振り返る。
「四十九日法要も終わったでしょう? ちょうどいい機会だから、おばあちゃんの部屋、片付けちゃおうと思ってね」
「はぁ? 待ってよ。いきなりすぎるでしょ」
確かに祖母はもういない。
とはいえ、四十九日法要が終わった翌日に、いきなり部屋を片付けるなんて。
「あっという間に年末よ。大掃除の時にばたばたするよりは、今やっといた方が楽でしょう?」
「そういうこと言ってるんじゃないんだけど」
文庫本をまとめようとしている母の手を止める。
生前、祖母が集めていたものだ。
「それ、おばあちゃんが大切にしてた本だよね?」
「だから、何?」
母は私に向き直る。
「おばあちゃんのものをすべて残しておけば、リナはそれで満足なの? でも、物も部屋も、置いておいたら傷むだけよ」
「そうだとしても、『人が二度目に死ぬのは誰からも忘れられた時だ』って、昨日、お坊さんが」
「あなたにはちゃんと、おばあちゃんとの思い出があるでしょう? それでいいじゃない。それは百のものを残しておくより、ずっと価値があると思うわ。忘れたいから片付けているんじゃないの。わかってちょうだい」