きみと秘密を作る夜
私の不安をよそに、転校生に対するお祭り騒ぎのような熱はすぐに引き、数日後には落ち着いた日常がやってきた。
休みの日には、新しい友達と一緒に遊びに行ったりもした。
何もない町だとばかり思って諦めていたが、電車に乗って繁華街の方に行けば、普通に流行りのものが売っていたことには感動した。
晴人とは、同じクラスとはいえ、席も離れているので、学校での会話はない。
特に話さないといけないようなこともないし。
だからなのか、学校から一番遠い私たちの家が隣同士だということすら、誰にも知られてはいないようだった。
学校では会話をしない私たちだけど、晴人は時々、「漫画貸して」だとか何だとか、くだらない理由で窓を飛び越えて、私の部屋に入ってくる。
最初はいちいち怒っていた私だったが、すぐに諦めた。
母は夜勤が多いし、祖母は早く寝るしで、夜にひとりの時間も多くて、晴人といれば暇潰しになることがわかったから。
カーテンを開けておけば、晴人はそれを合図に窓に向かって石を投げる。
ダメな時は、カーテンを閉めておくだけのこと。
私たちの関係は、誰も知らない。
知らせる必要のないことだ。