きみと秘密を作る夜
過去
11月も中旬を迎えると、すっかり上着が手放せなくなった。
「ねぇ、リナ。今日、学校が終わってから、カラオケ行かない?」
「またぁ? それよりテスト勉強しなよ。あさひ、前回、赤点ギリギリだったじゃん。留年したらどうすんの?」
「でもせっかくの高校生活なんだから、少しは遊ばなきゃ」
「あんたは遊んでばっかでしょ」
ふたりで笑う。
あさひは肩をすくめて見せた。
「あーあ。カレシいたら、もっと楽しいんだろうなぁ」
「何? 好きな人でもいんの?」
「いない、いない。今度はちゃんと、信用できる人じゃなきゃって思ったら、慎重になっちゃって、全然だよ」
「まぁ、そうだよね。嘘つく男は絶対ダメだよ」
晴人を意識的に避けるのは簡単だった。
元よりまったく別の生活で、会うことの方が少なったのだから。
あんな嘘ばかりの男なんて。
「もしも相手の心の中が見えたら、色んなことが簡単になると思わない?」
あさひの言葉に、私は何も返せなかった。