きみと秘密を作る夜
「何だかんだで可愛がってんじゃん。もう諦めて晴人の家で飼えばいいんじゃない?」

「やだよ。俺らより先に死ぬ生き物なんか飼っても、あとで悲しくなるだけだろ」


祖母が亡くなった時にも思ったが、晴人は誰より『死』というものを恐れているように見える。

その心の闇を、私はまだ知らない。



「お前は? こんなとこで何やってたんだ? まさか、またひとりで泣いてたか?」


誰の所為で私がこんなに思い悩む羽目になったというのか。



「泣いてないし。私がどこで何やってたっていいでしょ。晴人には関係ないじゃん」

「そうだけど、不審者が出るって話、知らねぇのかよ? お前もひとりでこんなとこにいたら、誰に何されるかわかんねぇぞ」

「それ、私に無理やりキスした男が言う台詞じゃないと思うけど」


私の嫌味に、晴人は少しバツが悪そうな顔をする。



「お前はほんっと、性格が悪い」

「お互い様だよ」

「もっといい女なんかいっくらでもいるのに、俺は何でこんなやつがいいんだかな」


告白なのか、それとも嫌味返しなのか、わからない。

すぐに微妙な空気になる。


私はため息混じりに宙を仰いだ。



「あーあ、だから今、晴人にだけは会いたくなかったのに。ずっと避けてたのに、どうしてこんな時に」
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