きみと秘密を作る夜
「昔の俺は、内気で、泣き虫で、そして父親のことが大好きな子だったんだ」と、晴人は遠い目をして話し始めた。
昔の晴人は、いつも家でひとりで、星の図鑑ばかり読んでいたそうだ。
誕生日には、念願叶って天体望遠鏡を買ってもらい、飛び上がって喜んだ晴人は、それを宝物にしていた。
しかし、家では図鑑を眺め、出掛けようと誘ってもプラネタリウムにしか行きたがらない晴人を心配した父親は、何か運動でもさせなくてはと思ったらしい。
そこで思い付いたのが、サッカーだったようだ。
父親も小学生の頃からサッカーをしていて、いつか我が子と一緒にボールを蹴りたいと願っていたらしい。
強引に地元のサッカーチームに入会させられた晴人は、最初は嫌々だったが、毎日のように父親と練習をするうちに、次第にその楽しさに目覚め、そして徐々にチーム内でも頭角を現していく。
「毎日、泥だらけになってさ。ご飯3杯食った時には、母さんもびっくりしてた。『体が大きくなって、お友達も増えて、今までの内気で泣き虫だったハルはどこに行ったの』って、笑ってたよ」
チームは晴人の頑張りもあり、地元で一番の強豪へと成長していった。
晴人は5年生にして、有名中学からスカウトまでされていたらしい。
さらに6年生になった晴人はキャプテンを任され、何もかもが順風満帆だったある日、さらなる吉報が家族の元に届いた。