きみと秘密を作る夜
風が冷たい。

海が轟音を鳴らしている。



「もちろん最初は自分の感情がよくわかんなくて、お前のこと変な女だって思ってた。ワガママでうぜぇしさ。でも、そう言いながらも気になって仕方なくて、あぁ、もしかして俺、里菜子のこと好きなのかなって」

「だったらどうしてその時に言ってくれなかったの?」

「お前まで失うのが怖かったんだよ。最初からないより、あるものをなくす方が、ずっと悲しいだろ? 形になってしまったものは、いつかは壊れるかもしれないから。だから、距離を取って、何もかもを曖昧にして、誤魔化し続けてたんだ」


砂の上にいる子犬は、大きな波音に驚き、晴人の足に隠れようとする。

晴人は息を吐き、怯える子犬を抱え上げた。



「こいつと同じ。臆病だったんだよな。だから、傷ついたり傷つけたりしないようにって」

「勝手だよ」

「そうだよな。でも、ずっとお前と笑ってられたらいいって気持ちもほんとだった。だから今はもう少しだけこのままでいたいって、自分に言い訳して」


私と晴人は、ふたりだけの世界で、小さな幸せを噛み締めていた。

けれど、あの日、事故が起きた。


流星群を見るために、夜中に家を抜け出した私たち。
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