きみと秘密を作る夜
「リナはハルと何かあったから、俺と距離を取った? ハルはその所為で、いきなりバイトを辞めた? 考えたってちっともわからない!」

「……そんなっ……」

「リナも、ハルも、ふたりして他人行儀で素知らぬ顔して、ずっと俺を騙してたんだろ? さぞ滑稽だったろうな。もしかして、俺のいないところで浮気でもしてたか?」

「そんなわけないよ! 確かに晴人とは昔色々あったけど、今の私が好きなのは遼なんだよ!? 信じてよ!」


精一杯で声を上げる。

しばしの後、私の言葉に、遼は震える息を吐いた。



「信じろって? じゃあ、俺とは別れないってことだよな? これからもずっと付き合っていくってことだろ? なら、ハルのことなんか好きじゃないって、ちゃんと言ってくれよ」


晴人なんか好きじゃない。

遼のためにもそう言おうとしたのに、なぜだか声が出なかった。



「なぁ、リナ。証明してくれよ」


言った瞬間、遼は掴んでいた肩を押し、私をその場に突き倒した。


上に乗った遼に見下ろされる。

遼の顔は、醜く歪んでいた。



「リナ」


いつも無邪気に笑っていたはずの遼の顔が、私の所為で。


背中にあるフローリングが、硬くて冷たい。

怖いというより、悲しかった。



遼の唇が近付いてくる。
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