きみと秘密を作る夜
「……ごめん、なさい……」


気付けば言葉が漏れていた。

別れないためには遼を受け入れなきゃと、当然、覚悟してここにきたはずなのに、なのに気持ちとは裏腹に、心も体もそれを拒否する。



「ごめん、遼。遼のことは好きだけど、こんな無理やりなの、間違ってるよ」

「何が間違ってるんだよ!」


近い位置で、遼は怒鳴る。

遼の歪んだ顔から、涙がこぼれた。



「間違ってるのはリナの方だろ! リナは最初からずっと、俺のことなんか好きじゃなかったんだよ! もう誤魔化すなよ!」


私は、最初からずっと、遼のことなんて好きじゃなかった?


そんなはずはない。

私はちゃんと、遼のことを好きになったから付き合ったのだ。



「遼……」


好きなはずなのに。

なのに、じゃあ、どうして遼を受け入れられないのだろう。


遼の涙のひとしずくが、私に落ちた。



「認めろよ、いい加減。今、リナの中にいるのは、俺じゃないだろ?」


私の中。


ずっとずっと頭の片隅にいる、膝を丸めて小さくなった晴人の影が、消えてくれない。

晴人はきっと今も、ひとりだから。
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