きみと秘密を作る夜
駅に、その人はいた。
あさひと一緒にいる私に気付き、「久しぶり」と、無邪気な笑みを向けてくる。
「遼。あさひが寒くてたまんないんだって。私、さっきから抱き付かれて困ってるから、どうにかしてよ」
「えっ」
遼とあさひの声が、同時に重なる。
ふたりして真っ赤になった顔がおもしろくて、私は今度は腹を抱えて笑ってしまった。
付き合いたてのカップルの初々しさったらないなと思う。
あれから、私たちが別れたあとも、あさひは今まで通り、遼とは友達だった。
しかし、寂しい者同士でクリスマス会と称して愚痴り合ったり、暇だからと一緒に初詣に行って騒いだりしているうちに、自分の中にある別の感情に気付いたらしい。
初めはすごく戸惑ったようだが、しかしあさひはきちんと私にそれを伝えた。
「遼のことを好きになった」、「でもリナの元カレでもあるから、どうしたらいいのかわからない」、「リナがどう思うか聞かせてほしい」。
そう言われて、驚きもあったが、でも私は諸手を挙げて賛成した。
それから紆余曲折あったが、ふたりはバレンタインを機に付き合い始めた。