きみと秘密を作る夜
お喋り女め。

思わず睨む私に、あさひは先ほどまでの涙もどこへやらで、悪びれもせずに舌を出して見せた。



「俺らがこんな風になったから言うわけじゃないけど、好き同士なんだろ? どうして付き合わないの?」

「………」

「俺に気兼ねしてるなら、もうそんな必要はないから。俺も今はふたりのこと何とも思ってないから、だから、もう一回ちゃんとハルと話し合うとか」


そこまで言った遼の言葉を遮る。



「私のことはいいから。遼は今はあさひの心配だけしてればいいんだよ」

「……いや、でも……」

「大丈夫だよ。ありがとう」


再び遮った私に、遼はもうそれ以上は言わなかった。



「じゃあ、私行くね。ふたりはデート楽しんで」

「リナも一緒にカラオケ行こうよ」

「バカ言わないで」


笑って返し、私はひとり、手を振って駅構内へと入った。


時間は進む。

私たちは、望むとも望まざるとも、ずっと同じ場所にいられるわけじゃない。

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