きみと秘密を作る夜
「将来のことはわかんないけど、働ける場所がないなら、新しく作ったりもできるわけだし」

「作るって?」

「たとえばさ、今は古民家カフェとかも流行ってるみたいで、都会の人が、わざわざ田舎にご飯食べにくるんだって。自然に囲まれながら、採れたての野菜が食べたい、みたいな? すごいでしょ。そういうことやるのもおもしろいと思うし」

「へぇ。都会の人は変なことを考えるよ。ないものねだりかねぇ。こっちはもう、山も海もうんざりだってのに」

「そうかな? 私は嫌いじゃないけどなぁ、この町」


確かに、夏は暑くて冬は寒いだけの町だ。

それでも、都会にいた頃は、空の青さも空気の匂いも、感じることすらできなかったから。


仕込み作業をしながら話していると、引き戸が引かれた。



「入っていいー?」


顔を向けると、そこにいたのは笑顔の竹田くんとゆっこだった。



「いらっしゃい。入って」


ふたりの来店は、もう何度目か。


前に偶然、私のバイト中にご飯を食べにやってきたふたりと再会した時には、本当に気まずかった。

が、あまりにも竹田くんがあっけらかんとしていたからか、私もゆっこも、次第に気を使い合うのがバカらしく思えてきたのだ。
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