きみと秘密を作る夜
木に登らなきゃ、流星群は見られない。

けれど私は、ひとりじゃこの木に登れない。



「……私、何しにきたんだろう……」


真っ暗な森の中。

ほとんど衝動的に家を飛び出したのに、このザマだ。


本当に、私は何をやっているのだろうかと思ったら、立ち上がることもできないまま、惨めさに泣きそうになる。



「晴人……」


晴人に会いたい。

これまでずっと封印してきた気持ちが、こんな時だからか、溢れてくる。



「晴人……」


もう一度、呟いた時、背後でガサガサと音がした。


熊かお化けか。

続いて光が宙を舞うが、それは人魂(ひとだま)ではなくて人工的な明かり。



「里菜子!」


名前を呼ばれて、明かりに照らされる。

驚きで固まる私に、声と明かりが近付いてきた。



「やっと見つけた」


そこには先ほどの私同様、スマホのライト片手に、息を切らした晴人の姿が。



「……何、で……」


何でここにいるのかとか、何をやっているのかとか、聞こうと思ったけれど、呼んだら本当に現れた衝撃に、上手く声も出せなかった。

晴人は、ぽかんとしたままの私の横に、息を整えながらしゃがみ込む。



「お前、どんだけ探したと思ってんだよ」
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