きみと秘密を作る夜
「だから、何で晴人が」


やっとの思いで喉の奥から声を出した私に、晴人はため息混じりに言った。



「おばさんがいきなりうちに押し掛けてきたんだよ」

「えっ」

「『リナが出掛けたまま帰ってこない』、『スマホも財布も置いてあるままだから、遠くへ行ったはずはない』、『なのに、近所やコンビニを探したけどどこにもいない』。で、もしかしたら俺といるかもって。そうじゃなかったら例の不審者がまた現れて、里菜子をさらって行ったのかもしれないって、もう大騒ぎで」


はっとしてポケットをさぐったが、スマホをバッグの中に入れっぱなしにしていたと、今更気付く。

そのバッグも、家に置きっぱなしで出てきたし。


おかげであれからどれくらいの時間が経ったかわからないが、でも母の心配ももっともだ。



「で? 何で晴人は私がここにいるってわかったの?」


私のさらなる問いに、晴人は大きく肩を落とした。



「里菜子がいなくなったって聞いて、何カ月ぶりかに遼に電話したんだよ。何か知ってるか聞いたら、あいつ、『俺とリナはもうとっくに別れてるよ』って。しかもあいつ俺らの昔のことも全部知ってたし、俺わっけわかんねぇんだけど」

「………」

「で、とにかくそれは置いといて、お前がいきなり飛び出して、しかもそれが『今日』なら、まさかと思ったんだ。俺もさっき、テレビで流星群のことやってるの観たし、もしかしたらって」
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