きみと秘密を作る夜
晴人の必死さに、もう逃げられないなと思った。

観念して顔を上げると、その目に真っ直ぐに見据えられ、ひるみそうにもなったけれど。



「遼の言ったことはほんとだよ。私はずっと、自分の気持ちに嘘をついて、まわりを騙して過ごしてた。その結果、遼のことを傷つけた」

「だから自責の念に駆られて、そのことを黙ってた?」

「それもあるけど、でも一番は、ちゃんとひとり立ちしたかったのかも」

「『ひとり立ち』?」

「私ね、ほんとはすごく嫉妬深いの。大切なものは誰にも取られたくないって思うし、それですごく相手の存在に依存して、他には何もいらないって思っちゃう。だから、また同じことになるのが嫌だったから、まずは自分のことをちゃんとしなくちゃって」

「『ちゃんと』って?」

「バイトしたり、趣味を見つけたり? そこで色んな人と出会って、ちゃんと人付き合いとかを学んで、今より少しだけでも大人になれたら、もうあの頃と同じ間違いはしないかなって」


そこまで聞いた晴人は、ため息混じりに肩をすくめた。



「俺も勝手だと思うけど、お前もかなり勝手だよな」

「でも、今更どう向き合えばいいかわからなかったのもほんとだよ。どんな顔して会えばいいかって思ったら、怖くて」
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