きみと秘密を作る夜
木々がざわめく。

晴人は大木に身を預け、頭上を見上げた。



「なぁ、何で登らなかった? 流星群、見にきたんだろ?」

「勢いできたはいいけど、晴人が手を引っ張ってくれないと、私ひとりじゃ登れないって気づいたから」

「あぁ、それでさっき、ぴーぴー泣きながら俺の名前を呼んでたのか」

「泣いてないでしょ」

「でも俺の名前は呼んでただろ?」


にやりとした顔がムカつく。



「気の所為だし! っていうか、それじゃあ私が晴人のこと好きみたいじゃん!」

「好きだろ?」

「全然好きじゃないから! さっきの話だって、別に晴人のことじゃないから!」

「はいはい。お前はほんとにこんな状況になっても素直じゃねぇのな」


大声を出す私を、晴人は呆れたように笑った。

私も、何だかバカらしくなって笑ってしまう。



「ついでだから、登るか?」

「ううん。いいの。登って待ってても流星群が見られるかどうかわかんないし。お母さん、心配してるだろうから、今日はこのまま帰るよ」

「だな。またいつでも見られるしな」


晴人は立ち上がり、私に左手を差し出した。

私は右手でその手を掴み、強く握る。



「じゃあ、帰ろうか」


晴人の言葉に、強くうなづく。
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