きみと秘密を作る夜
そのまま、一歩を踏み出そうとした瞬間、木の根に足を取られ、私は派手にすっ転んだ。

もちろん手を繋いだままの晴人も巻き添えだ。


ドサッという音と共に、ふたりで葉っぱまみれになる。



「いったーい!」

「ってぇな。ほんとどんくさすぎんだろ。バカじゃねぇの。あの時、お前が転がり落ちたデジャヴかと思って、心臓バクバクだわ」

「だって仕方ないじゃん。足元見えないんだもん。それより私のこと好きなくせに『どんくさすぎ』とか『バカ』とか」

「それとこれは関係ねぇだろ! つーか、俺だって別に今もお前のこと好きとか言ってねぇし! そもそもお前、何のために懐中電灯持ってんだよ! ちゃんと照らせよ! そういうところがバカだっつーんだよ!」

「はぁ!? そんなに怒ることないじゃん! 別に私だって好きで転んだわけじゃ」


ない、と、言うより先に、晴人は私の言葉を遮った。



「里菜子!」

「何よ?」

「里菜子、これ!」


葉っぱだらけの中から、晴人が見つけ、持ち上げたもの。

星のチャームのついた、ネックレス。


晴人が私の15歳の誕生日にくれたものだ。



「うそっ……」


あの日、ここでなくしたものが。

ずっと、斜面から転がり落ちた時になくしたと思っていたが、実際はそれより前に、ここで落ちていたのだろう。
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