きみと秘密を作る夜
笑顔
森を抜けて、私たちは神社をあとにした。
そのままふたりで手を繋いで、家までの道を歩く。
「あ、ねぇ、スマホ貸してよ。お母さんに連絡しときたいんだけど」
「さっき充電切れたから使えねぇよ」
「えー? 肝心な時にダメじゃん」
「お前を探すためにライトつけっぱにしてたんだから仕方ねぇだろ」
何だかグダグダだ。
でも、母には悪いが、どうせ怒られるなら、晴人とゆっくり歩いて帰るのも悪くないのかもしれないと思い直す。
「ねぇ、晴人。私さ」
言い掛けた時、視界を何かが横切った。
最初は虫か何かかと思ったのだけど。
「どした?」
「晴人。ねぇ、見て」
空を指差す。
晴人が見上げたと同時に、ひとつ、またひとつと、星が流れた。
「マジかよ」
まさかの流星群が、こんな場所で。
「何でこんなとこで見えんだよ!? じゃあ、俺らの今までの苦労って何だったんだよ!?」
あの日、私たちは、森の奥深くに分け入り、木に登ってやっと、流星群を見られたのに。
そしてその結果、あんな事故が起きて、ささやかな日常が壊れたというのに。
「……そん、な……」
確かにここは、まわりに民家も街灯もない、田んぼばかりの田舎道だけど。
けど、だからって、こんな普通の場所で見られるなんてと、流星群の感動もどこへやらで、私たちは脱力した。
っていうか、さっき、『もう一生、流星群なんか見られなくてもいい』と言ったばかりなのに。
「何だ、これ。俺ら、すげぇバカじゃん」
力なく笑う、私たち。
それでも繋いだ手は離さない。
またひとつ、星が流れて消えた。