きみと秘密を作る夜
こっちにきてから初めてのクリスマスパーティー。
父が一緒じゃないことは寂しいが、でも祖母が嬉しそうだったので、私も大袈裟に喜んで見せた。
「わぁ、ケーキおっきい! これおばあちゃんが作ったの?」
「おばあちゃん、昔はよくお菓子作ってたんだよ。久しぶりだから張り切っちゃって」
「ふうん」
上に乗っているイチゴをつまみ食いしようとしたら、「こら!」と母に怒られた。
「ケーキの前にご飯でしょ。これ運んで」
「ふぁーい」
仕方がなしに、食器を運ぶ。
母は料理をテーブルに並べながら、聞いてきた。
「成績は前の学校の時よりいいみたいだけど、ほんとに塾とか通わなくても大丈夫なの? ほら、前は数学苦手で塾でも苦労してたじゃない?」
「大丈夫、大丈夫。こっちは生徒が少ない分、先生がひとりひとりにちゃんと教えてくれるから、わかりやすくてさ。そう考えたら田舎の学校も悪いとこばっかじゃないね」
「それならいいけど。無理する前にちゃんと言いなさいね?」
「うん。ありがとう」
前の学校では、成績争いをしながらも、同時にオシャレして流行りのものを追い掛けながら、まわりに置いて行かれないように必死だったように思う。
あの頃はそれが当たり前だったから特に疑問も持たなかったが、でも今はのんびりとやっていけて、心にも生活にも余裕ができた。
そんな風にこの町のいいところを見付けられるようになったのは、間違いなく晴人のおかげだろう。
「それでさぁ、31日の夜に、ゆっこたちと初詣に行きたいんだけど、いい?」
「あぁ、あの、PTA会長さんのところの娘さんね。それなら安心だわ。いいわよ。遅くならないようにね」
「わーい。ありがとー」
豪勢な料理やケーキを前にしても、私の頭の中は、相変わらず、晴人のことでいっぱいだ。