きみと秘密を作る夜
きて早々に目的を果たしてしまったが、だからって帰る気にもならず、私たちは、ふたりで石階段に腰を下ろした。
空気はひんやりと冷たくて、でも不思議とずっとここにいたいと思った。
「髪」
「え?」
顔を向けると、不意に晴人と目が合った。
晴人はそっと私の髪を梳く。
「髪伸びたな」
「あ、うん。こっちの美容院、どこがいいのかわかんなくてさ。調べるの面倒で、伸びっぱなし。そろそろ切りたいとか思ってたんだけど」
こっちにきた頃はまだ鎖骨のあたりだった私の髪は、数ヵ月で胸の上のあたりまで伸びていた。
晴人はふっと笑い、ポケットから取り出した何かを私に差し出した。
「やるよ」
「何?」
「クリスマスプレゼント」
「……遅くない?」
「ほんとはクリスマスに渡そうかと思ってたけど、お前があんな問題集なんか投げて寄越すから、イラついて渡しそびれたやつ」
小さな袋の封を開けると、中には黄色いシュシュが入っていた。
月明かりにかざすと、ところどころについている星の形をしたスパンコールが、キラキラ光る。
「わー。可愛いー」
晴人はどんな顔をしてこれを買ったのだろう。
そう思うとちょっと笑えたけれど。
でも、晴人が私のことを考えて、私のために選んでくれたことが、何より嬉しかった。