きみと秘密を作る夜


煩悩まみれで除夜の鐘を聞き終えたら、「帰ろうぜ」と、晴人は立ち上がった。

少し寂しい気はしたけれど、あまり遅くなることもできない。


晴人に続いて石階段を降りていたら、夜露に濡れた石に滑り、「わっ」と転びそうになったところで、慌てて私は目前にある晴人の腕を掴み、ことなきを得たのだが。



「っぶねぇ! 突き落とす気かよ!」

「だって滑ったんだもーん!」


突然のことに、心臓はバクバクと音を立てていた。



「つーか、お前はいきなり分厚い問題集投げて寄越すし、今度は階段から突き落とそうとするし。俺のこと殺す気だろ」

「今のは事故じゃん」

「大体、お前はどんくさいんだよ。迷子になるのだってちゃんと道の確認しないからだし、ワガママだし、嫌いなもんばっかだし」

「ちょっと! どさくさに紛れて全部悪口じゃん!」


思わず声を荒らげた私に、晴人はため息混じりに「バーカ」と笑って、左手を差し出した。

少し驚いて、でも私はその手を右手で取った。


今度は手を繋いで、ふたりでゆっくり石階段を降りる。



「マジで死ぬかと思ったし」

「神様が助けてくれたのかもね」

「10円しか入れてねぇのに?」

「でもご利益あったじゃん。もしかしたら次のテストでは学年1位になれたりして」

「いや、今ので10円の効力なんて切れただろ」
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