きみと秘密を作る夜
晴人は私の言葉にしばらく首をひねって思案してから、



「西高にしろよ」


と、言った。



「俺も西高受験するつもりだし。だからお前も一緒に受ければ?」

「え……」


晴人と一緒の高校。

そんなこと、考えてもみなかった。



「あそこはわりと自由な校風だからバイトとかもオッケーだし、先輩らも学校楽しいって言ってっからさ。そんなにレベル高いわけじゃねぇから、お前なら余裕で合格すんじゃね?」


笑いながら言う晴人の顔を見る。


晴人は、私が唯一、心を開ける人。

晴人がいてくれるなら、どこの学校でもいいのではないかとさえ思えてきた。



「うーん。じゃあ、西高にしよっかなぁ。お母さんに相談してみるね」

「おー」


制服で選ぶよりも、ずっと安易な選択だと、自分でも思う。

だけど、晴人が『一緒に』と言ってくれたことが嬉しかった。


私にとって、晴人が特別だと思うように、晴人も私のことを特別だと思ってくれているのだろうか。

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