きみと秘密を作る夜
中学3年生の日々は、なかなかに忙しい。
テストに模試に、委員会に家事の手伝いに。
そうやって慌ただしい毎日が過ぎる中で、迎えた修学旅行。
行き先は、定番の古都だ。
寺社仏閣を巡って歩き続け、初日から疲労困憊の私たち。
「明日は座禅体験でしょ? ふざけんなっつの」
10人一室に敷き詰められた布団の上で、同じ班のゆっこは、足をさすりながら悪態をつく。
私と沙耶ちゃんは、苦笑いのままにそれにうなづいた。
「何か修行みたいだよね」
「もう無理だよ。私、美術部で体力ないから、辛い」
文句ばかり言い合っていたら、向こうにいた子たちに呼ばれた。
「ねぇ、今こっちで恋バナしてるんだけど、ゆっこたちも混ざらない?」
相変わらず、女子はいつでもどこでも恋バナが好きだなと内心で呆れながらも、断る理由もなく、ゆっこたちと一緒に私もその輪に混ざった。
10人の女子が、声を潜めてきゃっきゃと笑う。
「知ってる? ヤマッチ、エリにコクってフラれたらしいよ」
「マジで? じゃあ、やっぱりエリが伊藤のこと好きって噂、ほんとなのかな?」
くだらない。
と、思っても、さすがに顔には出さないでおく。