きみと秘密を作る夜
「お前らだって寝てなかったんだろ? みんなで輪になって何の話してたんだ? 俺がいかにかっこいいかって話か?」

「バカじゃん。タケなんかかっこよくないし。あんたはお笑い要員だから、論外」


小声ながらも言い合って笑う一同をよそに、私は愛想笑いする気力もなかった。


イライラするのは、疲れていて眠いから?

だから晴人の顔を見る気にもならないのだろうか。



「ねぇ、私もう寝ていい?」


私の言葉に、しかし竹田くんは思い付いたように言った。



「だったら、電気消して、怪談話しねぇ? やっぱ古旅館といえば怪談だろ。寝たいやつは寝ればいいし」

「はぁ? ガキじゃん。やんないよ」


ゆっこは怒るが、構わず盛り上がった男子たちは電気を消した。


うるさいのは嫌だったが、それでも恋バナよりはずっとマシかもしれない。

もう好きにしてくれと、呆れ返ってみんなに背を向けた瞬間。



「声が聞こえるのはこの部屋かー?」


先生の野太い声と同時に、ガチャリとドアの開く音がする。

消灯時間を過ぎて起きているだけでもやばいのに、その上さらに、部屋に男子までいるのを見られたら、一体どうなることか。


「隠れろ」と声がしたと同時に、私は誰かに腕を引かれていた。


突然のことにバランスを崩し、その場に倒れた瞬間、上から布団をかぶせられた。

狭い布団の中で、誰かに抱き締められ、息を殺す私。



「あれ? この部屋だと思ったんだけどなぁ」
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