きみと秘密を作る夜
修学旅行を終えたら、息つく暇もなく、今度は体育祭の準備が始まった。
リレーやダンスの練習があり、私は日々に疲れ果てていた。
母は夜勤に行き、祖母はすでに眠っているが、夜中に部屋にひとりでいても勉強する気になれずにいた時、カツン、カツン、と窓に小石が当たる音が。
カーテンを開けたままにしてしまっていたため、向こうからは丸見えで無視もできず、仕方がなく私は窓を開けた。
まともに晴人の顔を見るのは、修学旅行のあの日以来だ。
「何?」
「ちょっといいか?」
言うが先か、晴人は私の返事も聞かずにこちらに飛び移ってきた。
私は、あれからどんな顔をしていいかもわからないままだというのに。
「何の用?」
「機嫌悪ぃな」
「別にそんなんじゃないけどさ」
私の言葉に肩をすくめて見せた晴人は、ベッドを背に、床に腰を付けた。
隣に座るように促される。
気まずさを隠して腰を下ろした私に晴人は、
「あのさ、俺今日、誕生日なんだけど」
と、言った。
唐突すぎて、私は「えっ」と変な声を出してしまう。
「誕生日? えっと、おめでとう?」
「何で疑問形だよ」
笑った晴人と、肩がぶつかる。
途端に思い出すのは、布団の中での晴人の体温。
私はとんだ痴女じゃないか。
「何かくれよ」
「タカりにきたの? そんな急に言われたって何もないんですけど」
「何かあるだろ」
「ないよ。っていうか、そんなに言うなら晴人だって私の誕生日にいいものちょうだいよ? そうじゃなきゃ、割に合わないよね?」
「人の誕生日に交換条件を出すとは」
「いきなりきて、いきなり誕生日宣言して、プレゼントの催促する人には言われたくありませーん」