きみと秘密を作る夜
劣情
久しぶりに、家族そろって囲む夕食。
「この前の体育祭、リナちゃんが一番ダンス上手だったよ」
祖母は小さな子供を褒めるみたいな言い方で、何度も何度も同じ話をする。
その話をする時だけは、祖母はいつも本当に嬉しそうな顔だ。
祖母は退院してから、少しずつだけど元気を取り戻してくれていた。
「それに、リナちゃんが作ってくれた肉じゃがも、とっても美味しいし。リナちゃんは世界で一番の孫だね」
「何言ってんの。おばあちゃんの教え方がいいからだよ」
父に会いたいという気持ちは消えない。
だけど、何だかんだで、私は祖母のことだって好きなのだ。
「何だか最近、リナの方が料理が上手になってきたみたいで、お母さんとしては、ありがたいような、ちょっと困るような、複雑な気持ちね」
母の言葉に、祖母と顔を見合わせて笑った。