きみと秘密を作る夜
体育祭の疲れもやっと落ち着いた頃だった。
その日は、家庭科で調理実習があった。
クッキー作りだった。
思い思いに型取りしたそれを、ラッピングして持ち帰る。
「何かちょっと、端っこ焦げちゃったぁ」
「っていうか、髪の毛にまで匂いついちゃったよね。最悪ぅ」
「私お腹空いたんだけど、これもう食べていいのかなぁ?」
片付けを終えて、みんなで次の授業のために廊下を歩いていた時。
「リナちゃん、ちょっといい?」
麻衣ちゃんに呼ばれて足を止める。
何事かと思っていたら、有無を言わさず階段のところまで引っ張られた。
なぜか緊張した面持ちの麻衣ちゃんに、私はいぶかしげに「どしたの?」と問う。
「聞いたんだけどさ。リナちゃんの家ってハルくんと同じ、緑山町なんだって? どうしてこの前、教えてくれなかったの?」
何だかひどく面倒なことになる予感がした。