きみと秘密を作る夜


麻衣ちゃんにも、他の誰にも、晴人を取られたくない。

考えれば考えるだけ、醜い気持ちが湧き上がってくる。


深夜、私は晴人を部屋に呼んだ。



「見て、これ」


テーブルの上には、缶ビールが2本。



「田舎っていいよね。酒屋のおじさんと顔見知りだと、未成年でも『おつかいなんて偉いね』って言って、お酒売ってくれるんだもん」


缶の1本を手に取り、プルタブを開けて、もう1本を晴人に差し出した。

怪訝な顔をした晴人に、



「一緒に飲もうよ」


と、私は言う。



「いい子のフリしてんのも疲れるんだよね。たまにはハメ外したいでしょ」

「そういうのは、誰にもバレないようにやるもんじゃねぇの?」

「ひとりでやっててもつまらないでしょ。悪いことは、共犯がいるから楽しいんだよ」


私の言葉に肩をすくめて見せた晴人は、缶を受け取り、同じようにプルタブを開けた。

乾杯して、私たちは同時にそれを流し込む。


しかし初めて飲んだビールは、嫌に苦かった。



「まっず。大人ってこんなんのどこが美味しいと思って飲んでんだろうね」
< 57 / 272 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop