きみと秘密を作る夜
麻衣ちゃんにも、他の誰にも、晴人を取られたくない。
考えれば考えるだけ、醜い気持ちが湧き上がってくる。
深夜、私は晴人を部屋に呼んだ。
「見て、これ」
テーブルの上には、缶ビールが2本。
「田舎っていいよね。酒屋のおじさんと顔見知りだと、未成年でも『おつかいなんて偉いね』って言って、お酒売ってくれるんだもん」
缶の1本を手に取り、プルタブを開けて、もう1本を晴人に差し出した。
怪訝な顔をした晴人に、
「一緒に飲もうよ」
と、私は言う。
「いい子のフリしてんのも疲れるんだよね。たまにはハメ外したいでしょ」
「そういうのは、誰にもバレないようにやるもんじゃねぇの?」
「ひとりでやっててもつまらないでしょ。悪いことは、共犯がいるから楽しいんだよ」
私の言葉に肩をすくめて見せた晴人は、缶を受け取り、同じようにプルタブを開けた。
乾杯して、私たちは同時にそれを流し込む。
しかし初めて飲んだビールは、嫌に苦かった。
「まっず。大人ってこんなんのどこが美味しいと思って飲んでんだろうね」