きみと秘密を作る夜
日曜日。
ゆっこたちと街までカラオケに行き、駅で別れたところだった。
「里菜子?」
と、呼ばれた声に振り向くと、自転車に乗った晴人が。
「わー、偶然」
「何やってんだよ」
「街で遊んでたんだよ。で、帰ってきてバス待ってたとこだったんだけど、40分後でさぁ」
私の言わんとしていることがわかった晴人は、ため息混じりに「乗れよ」と言うが、言われるより先に、私は後ろに飛び乗っていた。
晴人の背中に抱き付く。
「晴人はいっつも私が困ってる時に現れるね」
「逆だろ。お前がいっつも俺の行く先々に現れるんだよ。いい迷惑だ」
言い合って、ふたりで笑う。
私がこの町にきて、もうすぐ1年。
何だか色んなことがあった気がする。
「あ、そうだ。この前、晴人のお母さんからもらったスイカ、美味しかったよ。お礼言っといてよ」
「おー」
「っていうか、おばさんってほんと美人だよね。お母さんっていうより、お姉さん? 肌なんか私より綺麗っぽいんだけど」
「あんなんただの若作りだよ。エステの仕事してっしな」
「エステティシャン? すごーい。でもそんな感じ。いいなぁ」
「そうか? 田舎だから客は暇なババアばっかだってよ。年金と病気の話しかされなくてうんざりすんだって」
「ふうん」