きみと秘密を作る夜


日曜日。

ゆっこたちと街までカラオケに行き、駅で別れたところだった。



「里菜子?」


と、呼ばれた声に振り向くと、自転車に乗った晴人が。



「わー、偶然」

「何やってんだよ」

「街で遊んでたんだよ。で、帰ってきてバス待ってたとこだったんだけど、40分後でさぁ」


私の言わんとしていることがわかった晴人は、ため息混じりに「乗れよ」と言うが、言われるより先に、私は後ろに飛び乗っていた。

晴人の背中に抱き付く。



「晴人はいっつも私が困ってる時に現れるね」

「逆だろ。お前がいっつも俺の行く先々に現れるんだよ。いい迷惑だ」


言い合って、ふたりで笑う。


私がこの町にきて、もうすぐ1年。

何だか色んなことがあった気がする。



「あ、そうだ。この前、晴人のお母さんからもらったスイカ、美味しかったよ。お礼言っといてよ」

「おー」

「っていうか、おばさんってほんと美人だよね。お母さんっていうより、お姉さん? 肌なんか私より綺麗っぽいんだけど」

「あんなんただの若作りだよ。エステの仕事してっしな」

「エステティシャン? すごーい。でもそんな感じ。いいなぁ」

「そうか? 田舎だから客は暇なババアばっかだってよ。年金と病気の話しかされなくてうんざりすんだって」

「ふうん」
< 63 / 272 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop