きみと秘密を作る夜
晴人に送ってもらって帰宅すると、久しぶりに祖母がお菓子を作っていた。
甘い匂いがする。
「ただいまぁ」
「あら、おかえり、リナちゃん」
「何作ってんのぉ?」
「ドーナツだよ。もうすぐできあがるから、食べるかい?」
「わーい、やったー」
喜ぶ私を見て、祖母はしわいっぱいの顔で笑う。
「ご機嫌だね」
「うん。おばあちゃんが作るお菓子、どれも美味しいからさ」
「そうかい。そりゃあ、嬉しいねぇ」
祖母は私に、できたてのドーナツを渡してくれた。
一口、頬張ると、甘い味が口内に広がる。
「おばあちゃん、調子よさそうだね。今日、老人会の集まりがあったんでしょ? どうだった?」
「お友達とたくさんお喋りしたら、何だか若返った気がするよ」
笑顔の祖母は、見違えるほど元気になっていた。
相変わらず、杖や車椅子がないと不便な生活だが、人は心持ちひとつでどうにでもなるのだと思う。
「長生きしてね、おばあちゃん」
「そうだねぇ。リナちゃんにたくさんお菓子作ってあげなきゃならないから、まだまだ死ねないねぇ」
冗談なのか、本気なのか。
祖母の言葉に私は笑った。