きみと秘密を作る夜
神社は相変わらず、暗がりだった。
晴人はスマホを出して、カメラのライトを懐中電灯代わりにする。
ほとんど肝試しみたいな感じで、私たちは慎重に森の中を進んだ。
「これってお化けとか出ない?」
「見えんの?」
「見えないけど」
「じゃあ、出てもわかんねぇじゃん。つーか、いるなら出てこいって感じだし」
「えー? 晴人って怖くないの?」
「死んだ人間なんか怖くねぇよ。生きてる人間の方が怖ぇじゃん」
「どこが?」
「言葉ひとつ、拳ひとつで簡単に相手を傷付けられるところとか?」
確かに、言われてみれば、そうなのかもしれないけれど。
私には右も左もわからない中を、晴人は迷うことなく進んで行く。
そのうち、目の前に、あの大木が現れた。
夜だと全体像が掴めないから、余計に大きく見える気がする。
「あっ、ちょっ、晴人!」
晴人は1年前と同じように、ひょいひょいと大木をのぼっていく。
スマホの灯りが、途中で止まった。
「里菜子、見えるか? 大丈夫そう?」
不安はあったが、それよりも、せっかくここまできたわけだし、晴人と流星群を見たいという気持ちの方が大きかった。
うなづいて、私はゆっくりと木の幹に足を掛けた。
晴人は上から私の手元や足元を照らしながら、指示を出す。
「里菜子!」
最後はやっぱり晴人に手を引っ張り上げられ、どうにか枝までのぼってこられた。