きみと秘密を作る夜
肩で息をしながら、私は顔を上げる。

目の前には、点々とある町の灯りと、そして散りばめられたような夜空の星々。



「見られるといいね、流星群」


私はまた同じことを言った。

晴人は答えず、代わりに私の手を握ってくれた。


手を繋いだまま、ふたりで夜の空を眺める。



「私さ、考えてみたら、今まで星なんかちゃんと見たことなかったかも。そこにあるのが当たり前みたいにしか思ってなかったし」

「でももう今はない星なのかもしれないって考えたら、ちょっとすごくね?」

「どういう意味?」

「俺たちが見てる星の輝きってのは、何百年、何千年、何億年も前の光が、やっと地球に届いたものなんだ。だから、俺たちが見てる星は、もしかしたら、ほんとは今はもうないのかもしれないってこと」

「幽霊みたいな? でもこれだけあったらひとつ消えててもわかんないね」


私の言葉に、晴人はおかしそうに笑った。



「月だって同じだよ。今、この瞬間の輝きは、ほんとは2秒くらい前のものなんだ」

「へぇ。じゃあ、月がいきなり消えちゃっても、私たちが気付くのは2秒後ってこと? 何かおもしろいね、それ」

「お前は消える話ばっかだな」

「だって、そう聞いたら、何だか幻を見てるみたいに思えて」


本当は消滅しているかもしれないのに、星は輝き続けている。

哀れで、でもとても綺麗。
< 73 / 272 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop