きみと秘密を作る夜
あの日、あのあと、意識のない私を発見し、晴人は慌てて救急車を呼んだそうだ。
病院に運ばれた私は、3時間ほど眠っていた。
その時間がどれほど長く感じられたかと、母は痛切に語っていた。
私の左腕にはヒビが入っていた。
左の眉の上あたりは切れていたので、4針縫ったのだとか。
カーディガンを羽織っていたから擦り傷は少なかったが、全身打撲で体は痣だらけになっていた。
けれど、怪我をしたことよりも、他に悲しいことがあった。
星のネックレスがなくなっていたことだ。
きっと、あの時、どこかに引っ掛けて、チェーンが切れて失くしてしまったのだろう。
シュシュも、土で汚れ、ところどころ布が破れて、使いものにならなくなっていた。
大事を取って、私は2日間、入院した。
仕事ばかりだと思っていた母は、その間ずっと、私に付きっきりだった。
晴人は一度も見舞いにこなかったけれど、母がいる所為だと思っておくことにした。
大丈夫。
怪我なんてすぐに治る。
私たちにはちゃんと約束があるから、だから絶対に大丈夫だと思いたかった。