きみと秘密を作る夜
狭い町。

噂好きの田舎に、守秘義務なんてあってないようなものだ。


きっと、話に尾びれや背びれがついて、学校にまで届いてしまったのだろう。



「リナとハルって、別に仲よくなかったよね? 少なくとも、私たちは、あんたらが話してる姿なんて一度も見たことなかった」

「なのに、ふたりはどうして一緒に深夜の森にいたの? ちゃんと話してよ。うちらは何言われても信じるから。だから本当のことを教えてよ」


本当のこと。

私と晴人の、これまでのことを話せって?



「あんたたち、ほんとは付き合ってたんじゃないの?」


付き合ってる?

そんな簡単な関係じゃない。


私と晴人のことは、私たちだけがわかっていればいい。



「何度も言わせないで。私は階段から落ちたの。森なんて知らない。救助もされてない」

「リナちゃぁん!」


沙耶ちゃんは、泣きながら私の体を揺すった。

でも私の決意は変わらなかった。


私は、それでもまだ、晴人との関係を守りたかった。


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