きみと秘密を作る夜


教室の空気は、重く淀んでいた。


誰も私に声を掛けない。

通りすがりに「ブス」とか「キモい」とか言われる以外には。



噂は、初めの頃は、母の妄想と同じように、私と晴人が森でいかがわしいことをしようとしていたんじゃないか、となっていたらしい。

でも、麻衣ちゃんたちのグループが、「ハルくんはそんなことをする人じゃない」とか何とか。


で、それに乗っかった男子たちが、「だったら小泉が森でレイプされているところをハルが助けたんじゃないか?」とか言い出した。


そこからどんどん、話は四方に飛んでいく。

昼を過ぎる頃には、私はすっかり汚いヤリマン扱いされていた。



きっと、噂をするネタさえあれば、真実なんて何でもよかったんだと思う。

みんな、とにかくおもしろおかしく騒ぎたいのだ。


そして運悪く、私と晴人はそれの標的にされてしまっただけ。



でも、私にとっては、すべてはどうでもいいことだった。

むしろ、邪魔な人間関係が消えて、せいせいしたと思ったくらいだ。


私には、晴人さえいれば、他の何もいらないから。

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