きみと秘密を作る夜
埋没
噂は日ごとに大きくなり、もう原型がどんな風だったかも思い出せない。
私も、そして晴人も、真実を話さないままだから、余計に騒がれるのかもしれないけれど。
最近じゃ、近所の人たちにまで白い目で見られる始末だ。
友達だったはずの子たちは、私のまわりから誰ひとりいなくなった。
晴人は登校していないみたいだけど、クラスが違うから本当のところはわからない。
あれから2週間。
私の体に無数にあった痣は、もうほとんど綺麗に消えた。
ひたいの傷も、かさぶたになって抜糸した。
晴人の模試の結果はどうだったのだろう。
わからない。
私は何も知ることができない。
晴人の部屋のカーテンは、一度も開くことはなかったから。
『終わり』って何だろう。
そもそも、始まってさえいなかったんじゃないかと、今では思う。
私と晴人は、初めて会った時からずっと、名前のない関係だった。
隣に住んでいて、あれほど何度も抱き合ったのに、なのに私は晴人の電話番号すら知らないのだから笑うしかない。
ただ、行き場を失くした私たちの約束だけが、ぽつんとそこに取り残されたまま。